三衣(さんね)とは?

「袈裟ハ言ク三衣アリ」という言葉が残るように、古来より袈裟とは三種類あるとされており、それぞれをまとめて「三衣(さんね)」と呼びます。

三衣はそれぞれ「安陀会(あんだえ)」「僧伽梨(そうぎゃり)」「鬱多羅僧(うったらそう)」と分類されており、現代でいう五条衣や七条衣などがそれにあたるのです。 ここでは仏教において元来、三衣とはどのように考えられ、分類されてきたのかをご紹介いたします。

三衣とは袈裟の基本である

古くから仏門において修行中の仏弟子の中でも、”摩訶迦葉のように最高の修行をする者はこの三種の袈裟だけで事を足らす”と言われてきました。 摩訶迦葉(まかかしょう)とは、仏様の十大弟子の1人に数えられ、釈迦の後継者とされたという記録が残っているお方です。

摩訶迦葉が「十二頭陀行」と呼ばれる、もっとも厳しい修行の生活をしたことがあり、その中の三衣だけを持って他の衣類を一切蓄えないということがあったことが由来になっています。 さらに、三衣の成り立ちは釈迦の体験から伝えられたことも合わせて伝えられており、以下のようなエピソードを共に紹介されることが多くなっています。

釈迦による後世への言い伝え

ある非常に寒い冬の日に、釈迦は夕方から夜中までは五条衣だけを召して過ごしていました。その後、夜も更けていき、さらに寒さが増したことによって七条衣を重ねて召されました。 さらに夜も明け方が近くなると寒さが増したことで重ねて大衣をお召しになったとされます。

これらの体験から、後世の仏弟子に対して「後の世になって、寒苦にたえられない時には、諸の仏弟子たちは、この三種の袈裟を身につければ事足りることができるであろう。」という故事が元になっているのです。

安陀会(あんだえ)※五条袈裟

五条袈裟は別名、「安陀会(あんだえ)」とも呼ばれており、主に日常に作業や就寝時に着用するとされますが、袈裟功徳によれば大小の旅行にも使用するとされます。 古来では、下着などにあたるものとされていたこともあり、もっとも基本かつ常に着用するものが、五条袈裟だと言えるでしょう。

鬱多羅僧(うったらそう)※七条袈裟

仏法上の様々な修行や、道場などで修行僧と行動をともにする時に着用するとされるのが七条袈裟です。別名は「鬱多羅僧(うったらそう)」と呼ばれており、法衣の中では、もっとも外側に着用するものです。 礼拝や食事、講経などではこの七条袈裟を着用するのが主流となります。

僧伽梨(そうぎゃり)※大衣

「僧伽梨(そうぎゃり)」と呼ばれる大衣に分類されるものは、九条袈裟以上かつ大衣にあたるものを指す言葉です。 王の宮殿や人間界、天上界の人を教化したり、敬いや信心の心を起こさせようとする場合には、必ず九条袈裟以上の大衣を着用するものとされます。

三衣の意味について

三衣については「福田衣」と呼ばれることもあり、これは衆生(田)に福(水)を与えるという意味を兼ねています。 このため、袈裟の縫い筋は田んぼに例えられて田相と呼び、それぞれ以下のような意味を持つのです。

葉 袈裟の田相でいえば、「あぜみち」の部分にあたる。

条 田の部分で縦に一列になっている部分をいう。

甲 それぞれの田の部分。

縁 袈裟の四方をめぐる狭い布の部分をいう。

鉤紐、台座 袈裟を身に着けておくためのひも。紐をつける部分の補強の布片を台座という。四分律には場所は明記されない。

角牒 四隅にある小さな四角形の布。

出典:http://www.kaijyusenji.jp/gd/kiko/sentence/k39.html

また、これら袈裟に使われていた色は、俗人が使用する五方正色(青、黒、白、赤、黄)に分類されない、独自の色を使用することが壊色(えじき)と呼ばれる仏教の教えに基づくものであったとされます。

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