【九条】金襴の法衣袈裟【七条】
法衣袈裟においては、発祥としてその素朴さや粗末さが大切にされてきたという始まりがあります。
例えば、糞掃衣にしても捨てられた布を繋ぎ合わせた寒さをしのげる程度のものであったことや、色においても壊色(えじき)を主体とした通常は使われることもないような色を重んじてきたことは、仏教の歴史においては大切なものです。
一方で、時代が進み、世界中に仏教という教えが広まる間には、日本においては天皇や中国においても皇帝、皇族のような人物が帰依することによって、お布施の種別なども変化していきます。
このもっとも顕著な例として挙げられるのが、いわゆる金襴を使用した袈裟だと言えるのかもしれません。
金襴衣
宋の時代に禅僧が天子から賜り物として頂いた袈裟は、当時「金襴衣」とも呼ばれており、金箔や漆を使用して金を織り込んだ材料を使用されていたとされています。
これらの金襴や銀襴が使用された袈裟は、鎌倉時代以降、日本に禅宗が持たられた時期から中国を生みの親として数多く日本にも持ち込まれます。
日本で制作されたのは安土桃山時代以降か
あまりにも歴史の長い袈裟や織物の文化の中で、袈裟における金襴がいつ頃から国内で織り始められたかは、まだハッキリとした考証が定まっていません。
ただし、西陣織のような高級織物が明代の織職人の技術が伝わったものだとされることから、金襴の袈裟が国内で織られるようになったのは日本における戦国時代である安土桃山時代が有力だと言われています。
現代でも制作されている金襴袈裟
現代においても、宗派によっては金襴の袈裟を用いることがあり、法衣店でも高級品として販売されていることが多いです。
金襴の袈裟は「新金製」と呼ばれる金に似せた加工をした糸を使用したものと「本金製」と呼ばれる本物の金を箔や糸として使用しているものに分かれます。
やはり、新金製は本金製に比べると金額が安く仕上げることができるため多用されることもありますが、蒸着加工によって精製されているので経年劣化によって色落ちなどがおきます。
本金製は価格が高くはなりますが、新金製に比べると劣化することがほとんどありません。
デザインや織技法によっても価格は変化しますが、金襴の袈裟は僧侶の品格を大きく上げてくれる法具の1つだと言えるでしょう。