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このお袈裟は、ただ身につけるためだけのものではありません。胸元に描かれた「二河白道」は、それ自体がひとつの法話です。お話の席で、この一領を指し示しながら、極楽への道のりを語ることができます。
二河白道 ── この世から、浄土へ
向かって東の岸は、わたしたちが今を生きる「この世」娑婆世界。西の岸は、阿弥陀仏のいらっしゃる「浄土」極楽世界です。二つの岸のあいだには、水の河と火の河が逆巻き、その境い目を、一筋の細い「白道」がまっすぐに貫いています。
水の河と火の河を貫く、一筋の白道
「行け」と釈迦、「来い」と阿弥陀仏
東の岸では、釈迦が背中を押します。「心を定めて、この白道を行きなさい」と。西の岸からは、阿弥陀仏が手を差し伸べます。「一心に念じて、こちらへ来なさい」と。送り出す声と、迎える声。その二つに支えられて、人は白道を渡っていきます。
引き止める、盗賊や猛獣
東の岸からは、盗賊や猛獣が追いかけてきて、こう呼びかけます。「戻ってきなさい。その白道は危うい悪しき道、とても渡りきれはしない」と。彼らは、わたしたちの歩みを引き止める「仏道修行の妨げ」を表しています。それでも振り返らず、白道を進む——その姿が、この柄には込められています。
今まさに迎えられる、来迎の図
二河白道は、いままさに往生しようとする人を、阿弥陀仏が迎え入れる「来迎図」でもあります。善導大師は『観無量寿経』で説きました。煩悩にまみれたわたしたちであっても、一心に念じれば「悟りの彼岸」に至ることができる、と。
念ずれば、彼岸へ。その教えを、胸元に宿す一領です。
色に込めた、ふたつの意味
水の「瑠璃紺」── 仏の髪、仏国土の色
艶をふくんだ、深い紫みの紺。仏教では「瑠璃紺」と呼ばれ、仏の髪や仏国土をあらわす色とされます。あらかじめ紺に染めた布を蒸気で蒸し、やや明るく仕上げたもので、江戸時代には小袖の色として広く好まれました。
火の「蘇芳」── 平安貴族が愛した、高貴な色
黒みを帯びた、落ち着いた赤。マメ科スオウの樹皮からいただく色で、『今昔物語』では凝固しかけた血の色にもたとえられました。平安の貴族に愛された高貴な色で、やがて紫の代わりとしても用いられました。
四代目のひとこと
二河白道のお袈裟は、お話の道具にもなり、身につける方の歩みそのものにもなります。法話のたび、袖を通すたび、その意味をそばに感じていただけたら嬉しく思います。
直七法衣店 四代目ナオシチ
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